中国の実用新案とは?日本の制度との違いと、実用新案利用上の注意点

 インターネットで検索をすると、日本において実用新案登録は無意味である、という検索結果が目につきます。これは、日本の実用新案が無審査で登録されることが大きな原因であると思われます。一方、中国では、実用新案は審査により権利化され、特許よりも無効にされにくく、権利が安定していると言われています。さらに、中国では特許と同日出願をすることができ、実用新案の方を先に登録しておいて特許査定が出たら実用新案権を放棄する、という利用ができます。

 この記事では、日本の実用新案と中国の実用新案とを比較すると共に、中国の実用新案の利用方法について紹介します。 

もくじ

1. 日本の実用新案

2. 中国の実用新案とその利用価値

3. 特許・実用新案同時出願の注意点

4. まとめ 

1.日本の実用新案

 日本では、実用新案は無審査で設定登録になります。そのため、ただ設定登録になっただけでは、無審査であることを理由に権利を主張することができません。無審査、と言いましたが、未審査との言い方もできます。日本で実用新案権を行使するには、「実用新案技術評価書」を提示しなければならないからです。実用新案技術評価書は、設定登録された実用新案権の有効性についての客観的な判断材料となるものであって、特許庁の審査官が先行技術文献の調査を行って新規性、進歩性などについて評価するものです。

 実用新案は、特許で求められるほどの進歩性は求められないものの、特許にならない程度の考案では実用新案技術評価書も否定的となり、権利行使しづらいものとなります。権利行使に審査と同様の評価が必要なため、敢えて実用新案登録を図る意味がないとの考えが知財業界では強いようです。そして、実用新案よりも、同じく物品の形状等についての権利である意匠出願をした方がいい、といった意見が優勢です。ただし、実用新案にも、迅速かつ安価に登録が可能、と言うメリットもあります。(「安価」は登録までにかかる費用についてであり、費用対効果の点では必ずしも安価と言うわけではないと考えます)

 なお、日本の実用新案法では、物品の形状、構造又は組み合わせに係る「考案」が保護の対象となっています。すなわち、単純方法や製造方法、並びに図面に表すことができない物(組成物)は、実用新案法における保護対象となりません。 

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2.中国の実用新案

 
 (1)中国では、特許と実用新案とが明確に区別されています。進歩性の判断の際に引用される先行技術文献の数が一般に2つ以下(特許では一般に3つ以上を組み合わせて判断化)とされており、先行技術の分野も該当分野の文献に限られます(特許は関連する周辺分野の文献も考慮できる)。すなわち、中国では、実用新案の進歩性のレベルが、特許の進歩性のレベルよりも低い、と言うことです。

(2)逆の言い方をすると、中国の実用新案は先行技術との少しの相違点があれば登録要件を満たすといます。そのため、登録になった後に無効理由が生じることは少なく、権利が潰されにくい、ということができます。つまり、中国では実用新案権は安定している、ということができます。

(3)中国の専理法第2条第2項では、実用新案とは、製品の形状、構造又はそれらの組合せについて提案された実用に適した新しい発明/考案であると定義されています。そして、中国の実用新案は製品のみを保護対象としています。ここでいう「製品」とは、産業的方法により製造されたもので、確定した形状、構造を有し、かつ一定の空間を占める実体をいいます(審査指南第1部第2章6)。

 以下の発明は、実用新案権の保護の対象となりません。
(a) あらゆる方法的発明。
(b) 確定した形状がないもの。例えば、気体状態、液体状態、粉末状、粒状などの状態の物質や材料。具体的には、例えば化合物、化学組成物、結晶体。
(c) 製品の特徴が材料の改良にあるもの。例えば、製品の原材料の組成を記載した請求項。
(d) 製品の特徴がその製法の改良にあるもの。例えば、製造方法の工程を記載した請求項。

 ただし、実用新案の請求項の構成要素の一部に、例えば樹脂、ゴムなどのような既知の材料の名称を記載することは認められているようです。また、実用新案の請求項の構成要素の一部に、例えば溶接、リベット締めなどのような既知の方法の名称を記載することも認められているようです。

(4)中国では、実用新案に対して予備審査を行い、これを却下する理由が存在しない場合、実用新案特許権を付与する決定が行われます。この決定が行われると、相応の専利証書が交付され、同時に登録及び公告が行われます。実用新案特許権は、公告の日から有効になります。以上は中国の専利法40条で規定されています。

(5)中国の特許法(専理法)には、日本でいう出願変更制度は存在しません。しかしながら、出願人は同一の発明について特許と実用新案との両方を同日に出願することができます(専利法第9条、実施細則第41条第2項)。

 第9条 同様の発明創造に対しては1件の特許権のみを付与する。但し、同一の出願者が同日中に同様の発明創造について実用新案特許を出願し、同時に発明特許を出願した場合、先に取得した実用新案特許権が終了する以前において、出願者が当該実用新案特許権の放棄を宣言したものは発明特許権を付与することができる。(以下略)

 中国では、以下の戦略を取ることができます。
① 同じ発明について特許と実用新案とを同日に出願をする。
② 審査が早く権利化が容易な実用新案の登録をする。
③ その後の審査で特許が登録査定となったタイミングで、実用新案特許権の放棄をして特許権を得る。

 中国でも、特許出願の審査は、実用新案の審査よりも長くかかります。おまけに早期審査の制度がありません。そのため、出願から数年は「特許出願中」となり、権利行使をすることができません(日本と同じように、出願後の補償金請求権は認められています)。しかしながら、上記戦略によれば、早期に登録可能な実用新案権で出願から早い段階での権利化を目指し、特許の登録要件を満たしていることになれば、より権利期間が長く、損害賠償請求額を実用新案よりも多く請求でき得る特許権に「乗り換える」ことができます。すなわち、前半は実用新案特許権にて権利保護をし、後半は特許権で権利保護をする、という使い方です。

(6)一方、中国の実用新案は、権利期間が出願日から10年ですが、技術進歩が早い分野であり、ライフサイクルの短い商品であれば10年でも十分な場合があります。このような製品の場合には、特許ではなく、敢えて実用新案の設定登録を目指す、といった戦略を取ることもできます。 

中国実用新案

   

3.特許・実用新案同時出願の注意点

 (1)中国の実用新案の保護対象は、上記の通り限られています。そのため、例えば組成物など特定の形状を持たないものに関する発明、及び方法の発明に関する発明は、特許・実用新案同時出願をすることはできません。

(2)専利法40条では、実用新案特許権を付与する決定が行われると、公告が行われることが規定されています。

 実用新案の審査期間は約4ヶ月と言われています。そのため、実用新案出願のタイミングによっては、基礎出願の公開よりも早く公告される可能性があると思われます。基礎出願の公開よりも早く公告された場合、基礎出願の内容を含んだ出願は、中国の実用新案の公告により特許を受けられない可能性があると思われます。

 日本では、出願Aが公開となる1年6ヶ月よりも前に出願Bをし、出願Aと出願Bとが同じ出願人による出願の場合、出願A自体は出願Bの先行技術とはなりません。一方、例えば、日本の出願Aを優先権の基礎として出願Aの出願日の2ヶ月後に実用新案出願Cをし、出願から最短で設定登録となった場合、日本の出願Aの公開日よりも早く、実用新案出願Cが公告される可能性があると思われます。この場合、中国に実用新案出願Cをしたことを失念し、実用新案出願Cの公告日よりも後に、実用新案出願Cのクレームの内容を含んだ出願Bを日本で出願をした場合、出願Bは、中国の実用新案出願Cに基づいて、新規性なし又は進歩性なしの拒絶理由を受ける可能性があります。 

4.まとめ


 中国の実用新案は、無効とされにくい権利でありながら、権利行使の大きな武器となり得ます。そのため、中国の実用新案は、自社技術の知的財産化の手段の有力な選択肢であると言えます。ただし、中国の実用新案の公告により、日本での特許が取得できなくなる可能性もあると思われますので、パテントポートフォリオの構築の際には注意が必要であると考えます。

 IPOMOEAは中国の現地パートナーを通じて、中国の実用新案に関する詳しい情報を提供することができます。お気軽にお問い合わせください。

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