米国特許出願で補正手続きを行う方法|補正に必要なことと手順

 特許出願において、出願時は出願人が把握している先行技術を考慮しつつ、できるだけ広い権利範囲を得るべくクレームを作成します。しかし、審査の過程で予期せぬ先行技術が挙げられて、クレームを変更しなければならない場合も生じます。その際に、出願人はクレームを「補正」します。

 日本と米国とでは、新規事項の追加禁止など、補正の基本は同じ部分もありますが、異なる要件もあります。米国での補正の要件の理解は、より効率的に、より有効な特許権を米国において得ることにつながります。この記事では、米国での補正に関する法文、補正の具体的な要件について紹介します。 

もくじ

1. 米国における特許補正に関する法文

2. 米国特許補正の方式

3. 補正の機会及び補正の制限

4. まとめ 

1.米国における補正に関する法文


  米国では、主に、MPEP714及び特許規則 1.121に、補正が規定されています。特許規則1.121の(a)には、以下のような記載があります。

(a) 再発行出願以外の出願に関する補正
 再発行出願以外の出願に関する補正は、特許規則1.52を遵守し、指定した補正を指示する書類を提出することによって行う。


 このように、日本と同様に、米国でも、補正書を提出して、補正を行います。そして、MPEP 714の”II. MANNER OF MAKING AMENDMENTS UNDER 37 CFR 1.121”では、細かな方式についても規定されています。以下では、いくつか重要な点を紹介します。 

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2.米国特許補正の方式

(1) 変更を示すマーキング(B及びC(B))
 日本の補正では、変更した箇所に下線を引きますが、削除した部分は残しません。一方、米国では、削除する部分には取り消し線を引き、元の記載を残します。連続する5以下の削除を示す場合は、二重括弧を使用することができます。また、追加した箇所には下線を引きます。

 例:
 元の記載:樹脂Aと金属元素Bを含む粉末とを含む組成物。
 補正後 :樹脂Aと、ハロゲン化Bを含む粉末とを含む組成物。

1. A composition comprising a resin A and a powder comprising a metal element B
1. (Currently Amended) A composition comprising a resin A and a powder comprising a metal element B B halide.

(2) クレームのステータス(C(A))
 クレームを補正する場合、クレームが取り消される場合を除き、その全体のクレームを、変更を加えて書き換えることによって行わなれければなりません。そのため、係属している及び取り下げられた全てのクレームをクレーム一覧として示す必要があります。一方、取り消したクレームは、示してはいけません(特許規則1.121 (c))。そして、クレーム一覧では、クレームのステータスを記載する必要があります。具体的には、原(Original), 今回補正(Currently amended), 取り消し(Canceled), 取り下げ(Withdrawn), 先に提出(Previously presented), 新(New), and 未記録(Not entered)を記載します。

 なお、取り消しは、対象クレームをClaimsから削除することで、取り下げは、限定要求で選択しなかったクレームを審査の対象から除外することであり、両者は異なる行為です。ステータスの記載が間違っていると、それだけで拒絶理由通知が来る可能性があります。米国代理人からのドラフトをチェックする場合は、ステータスのチェックをお忘れなく!

(3) クレームの番号(C(D))
 米国では、クレームの削除(取り消し等)があっても、クレーム番号が変わらないことに留意が必要です。また、新たにクレームを追加するは、補正前のクレームの後ろの番号になるようにします。

(4) 具体例
 以下に、具体例を説明します。例えば、以下のような補正前に以下のようなクレームがあったとします。
クレーム1:Aを含むたこ焼き機
クレーム2:鉄板がBであるクレーム1に記載のたこ焼き機
クレーム3:鉄板にフッ素加工が施してあるクレーム2に記載のたこ焼き機
クレーム4:鉄板の溝にCがあるクレーム2に記載のたこ焼き機
クレーム5:鉄板の溝にCがあるクレーム3に記載のたこ焼き機
クレーム6:クレーム1に記載のたこ焼き機を用いたたこ焼きの製造方法

 出願後、限定要求を受け、たこ焼き機に関するクレーム1〜5を選択し、クレーム6を審査対象外として取り下げたとします。そして、その後、ファーストアクションで、クレーム5が許可可能と判断され、クレーム5を独立項に補正する場合、例えば以下のようになります。

クレーム1–4(取り消し)(※取り消しの場合、クレーム本文は記載してはいけません)

クレーム5(今回補正)Aを含み、鉄板がBであり、鉄板にフッ素加工が施してあり、鉄板の溝にCがあるクレーム3に記載のたこ焼き機

クレーム6(取り下げ)クレーム15に記載のたこ焼き機を用いたたこ焼きの製造方法(※取り下げたクレームでも、クレーム一覧には残します。また、クレーム1を削除しているため、それに合わせてクレーム1をクレーム5に補正する必要が生じます)

 なお、クレーム1に、クレーム2、3及び5の事項を追記する、という補正も考えられます。 

米国特許補正

3.補正の機会及び補正の制限


 さて、米国でも、日本と同様に、補正のできる機会が制限されています。以下、補正の機会を紹介します

(1)原則として、最初の庁指令の発送日までは、いつでも補正をすることができます。
この機会に行う補正を、予備的補正といいます(特許規則1.115)。

 この際の補正は、明細書及び図面に開示された範囲内、すなわち新規事項(new matter)を追加しない範囲で比較的自由にクレームを補正することができます。米国では、欧州や中国とは異なり、実施例の数値から数値範囲を抽出してクレームに記載する補正も許される可能性が高いです。また、米国では、明細書に文字として記載されていなくても、図面の記載から補正できる場合があります。

 このように、米国での新規事項か否かの判断は、他国に比べて緩いと言えます。また、国際出願の米国各国移行の際、マルチマルチクレームを無くすように補正する場合も、この段階で行うことができます。

(2)限定要求/限定要求を受けた場合、出願人は、審査対象とする発明(発明群)及び/又は種を選択することを要求されます。

 審査官の指摘に対して反論することもできますが、反論する場合にも発明(発明群)及び/又は種を選択しなければなりません。選択しなかった発明(発明群)及び/又は種に関するクレームは、「取り下げ」となり、審査対象外となります。ただし、特許査定時に、選択しなかった発明群/種に関するクレームは「復活」することがあります。復活しなかったクレームは、「分割出願」により権利化を図ることができます。

(3)ノンファイナル・オフィス・アクションに対する応答の際にも、新規事項を追加しない範囲で比較的自由にクレームを補正することができます。

 ただし、限定要求で選択しなかったグループの発明を再度追加すると、さらに限定要求を受ける可能性があります。補正(応答)の期限は、ノンファイナル・オフィス・アクションを受けた後、当該アクションを受けた日から3ヵ月以内(最大6ヵ月まで延長可能)です。

(4)ファイナル・オフィス・アクションに対する応答の際には、当然の権利としては、補正をすることができず、審査官が認めた場合にのみ補正をすることができます。

 この段階で許される可能性があるのは、新規事項を追加しない範囲の補正であることに加え、クレームの削除、先の拒絶理由通知で通知された方式的な要件を満たすための補正、審判の審理のためにより良い形にする補正のいずれかです。そして、新規争点(new issue)を提起する補正は認められません。そのため、以下に示すRCE又はAFCP2.0を利用しない場合、ファイナル・オフィス・アクションに対する応答の際は、従属項を独立項に補正する程度のことしかできず、実質的には補正をすることができない、と言っても過言ではありません。

 一方、RCE(継続審査請求)をすることで、出願のファイナリティを解除し、ファイナル・オフィス・アクションを受けた際の補正の制限を超える補正をして、審査官に再度審査してもらうことが可能です(RCEには、別途費用が必要です)。また、ファイナル・オフィス・アクションを受けた際の補正の制限を超える補正が必要な場合、AFCP2.0を申請するという選択肢もあります。この制度は、クレームの範囲を広げない補正をした上で、審査官が3時間だけ検討して特許可能であると判断されれば、RCEをせずに特許可能となる場合があります。検討に3時間以上かかると判断された場合は、アドバイザリーアクションが出されます。その際は、RCEをして、審査官に再度審査してもらうことができます。AFCP2.0については、結局RCEをせざるを得ないケースが多いためあまり有用ではない、という意見もありますが、RCEをせずにファイナル・オフィス・アクションに対応できる場合もあるので、利用価値はあると思われます。

 補正の期限は、ファイナル・オフィス・アクションを受けた日からから3ヵ月以内(最大6ヵ月まで延長可能)です。

(5)継続審査請求(RCE)をする場合には、ファースト・オフィス・アクション対応時と同様に、新規事項を追加しない補正であれば、許されます。 

4.まとめ

 このように、米国での補正は、日本での補正と異なる点が多くあります。特に、ファイナル・オフィス・アクション対応時には、当然の権利として補正をすることができないことに留意が必要です。一方、米国では、新規事項の判断が他の国よりは緩いと言えるので、補正の可能性が広い、ということもできます。新規事項であるか否かの判断、補正の様式などは、これらに精通した米国特許事務所に相談するのが、最も効率的で、安全であると考えます。

 IPOMOEAでは、多くの米国特許事務所とコンタクトを取っていますので、米国における補正にお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。


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