ロシア及びウクライナで特許を申請して取得するには

2022年2月、ロシアが隣国ウクライナに侵攻しました。この記事で政治的な意見をすることは差し控えますが、尊い人命が日々失われている状況は許されざるものであると思います。そして、この悲劇的な状況が解消され、平和な世界が戻ることを切に願うばかりです。

 さて、ロシアやウクライナを含む旧ソ連の国では、どのように特許を取得できるのかが気になりませんか?この記事では、旧ソ連の国で特許を取得する方法について紹介します。 

もくじ

1. 旧ソ連の各国での特許
2. バルト三国以外はEPCルート以外で
3. ウクライナの特許法
4. ロシアの特許法
5. ユーラシア特許
6. 今後
7. まとめ 

1.旧ソ連の各国での特許出願のルート

 旧ソビエト連邦(旧ソ連)は、1991年に崩壊し、アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、エストニア、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタン、ベラルーシ、モルドバ、ラトビア、リトアニア、そしてウクライナ及びロシアとなりました。これらの旧ソ連の国のうち、エストニア、ラトビア、及びリトアニアのバルト三国は、EU及びNATOに加盟しています。そして、バルト三国は、欧州特許条約(European Patent Convention: EPC)に入っています。

 こちらの記事で紹介したように、欧州特許条約を結んでいる国は欧州特許庁(EPO)に出願をし、許可通知が出されれば条約締結国の中で指定した国(指定国)での特許権を得ることができます。なお、イギリスは、EUを離脱しましたが、EPCはEUの機関ではないためEPC経由で特許権を取得することができます(2022年3月現在)。一方、バルト三国を除くロシア及びウクライナなどの国は、EPCに加盟していないためEPO出願を経由する出願をすることはできません。 

2.バルト三国以外はEPCルート以外で

 バルト三国以外の旧ソ連の国はパリ条約及びPCT条約の締結国です。ロシアもウクライナも締結国です。そのため、バルト三国以外の旧ソ連の国へはパリ条約に基づく優先権主張を行なって出願をすることができますし、PCT出願からの国内移行出願で出願をすることもできます。もちろん優先権を主張せずに直接出願をすることもできます。ウクライナでの特許の審査は、どのルートで出願するにせよウクライナの特許法に基づいて行われます。同様に、ロシアでの特許の審査も、基本的にロシアの特許法に基づいて行われます。そのため、ウクライナ及びロシアの特許法を理解する必要があります。

ウクライナ特許1

3.ウクライナの特許法

さて、ここで、ウクライナの特許法について簡単に紹介します。出典はこちらです。

(1)所轄官庁及び定義
 ウクライナの特許の所轄官庁は、「教育科学省」です(第1条)。
 ウクライナにおいて、「発明」とは、技術の分野における人の知的活動の所産をいいます(第1条)。

(2)保護対象
 ウクライナの特許法第6条では、ウクライナでの特許の保護対象を以下のように規定しています。
(1) 法的保護は,公序良俗、人道及び道徳と矛盾せず、且つ、特許性の要件を満たしている 発明(実用新案)に対して付与するものとする。
(2) 次に掲げるものは,本法に基づいて法的保護を受ける発明の対象とすることができる。
−製品(装置、物質、微生物菌株、植物又は動物の細胞培養物等)
−方法並びに既知の製品又は方法の新規使用
(3) 次に掲げる技術対象に対しては,本法に基づく法的保護は及ばないものとする。
− 植物及び動物の品種
− 植物及び動物の繁殖方法であって、本質的に生物学的なものであり、且つ,非生物学的及び微生物学的方法に属していないもの
− 集積回路の回路配置
− 芸術創作の成果

 日本と異なり、自然法則を利用していることは要件ではないようです。この条文を読む限りは、治療方法などの医療行為も保護対象のようです。

(3)特許性の判断
 ウクライナでは、発明が新規性、進歩性、及び産業上の利用可能性を有しているときは、その発明は特許要件を満たすと判断されます(第7条第1項)。なお、ウクライナでは、発明者、又は発明者から直接もしくは間接的に発明を取得した者が出願日前又は優先日前の12ヶ月に行なった情報の開示によっては特許性の判断は左右されません(第7条第6項)。日本でいう新規性喪失の例外適用(日本特許法第30条)に対応します。第12条第9項では、要約書はクレームの解釈や技術水準の判断に使用されない旨が規定されています。

(4)出願の言語及び優先権翻訳
 ウクライナへの特許出願は、ウクライナ語又は他の言語で行うことができます(第12条第5項、第13条)。ウクライナ語以外での出願の場合、出願日から2ヶ月以内にウクライナ語で出願をする必要があります。一方、優先権を主張する場合、先の出願のウクライナ語の翻訳文が要求されることがあります(第15条)。いわゆる優先権翻訳ですね。
 

4.ロシアの特許法

 次にロシアの特許法について紹介します。出典はこちらです。

(1)ロシア特許法
 ロシアでは、連邦民法第4法典第7編第72章に「特許法」があります。

(2)特許権の保護対象及び特許要件
 第1350条には、「製品(装置、物質、微生物の菌株、植物若しくは動物の細胞培養を含む)又は方法(有形手段を用いて有形物に影響を与える方法)に関連するあらゆる主題分野における技術的解決は、製品の使用又は特定の目的の方法を含め、発明として保護を受けることかができる。発明は、新規であり、進歩性を有し,かつ産業上利用可能な場合は法的保護が付与される。」と記載されています。

 一方、第1349条には、
(1)ヒトのクローン化方法及び得られるクローン
(2)ヒトの胚細胞株の遺伝的完全性の組換え方法
(3)工業目的及び商業目的でのヒトの胚の使用
(4)本条第1段落にいう知的活動の成果であって公共の利益、人間性及び倫理性の原則に反するものは、特許権の客体ではないことが規定されています。

 ウクライナと同様に自然法則を利用していることは要件ではないようです。そして、この条文を読む限りは、治療方法などの医療行為も第1349条に記載された行為以外は保護対象のようです。

(3)秘密発明
 ロシアの特許法では、国家機密を構成する情報を含む発明は「秘密発明」と定義されています(第1349条)。秘密発明については第7節で詳細に規定されています。国家機密が法文で規定されている点は、日本人の感覚だと驚くべきものです。そして、第1360条には、「国家安全保障の利益のために,ロシア連邦政府は特許権者の同意なく,発明,実用新案又は意匠の使用を許可する権利を有する。」と記載されています。「国家安全保障の利益のために」という前提がどのようなものであるか不明ですが、政府の方針で、例えば外国人の特許権者が特許権を行使できなくなることを意味しているものだと思われます。

(4)出願言語
 第1374条第2項では、「発明,実用新案又は意匠に対する特許付与を求める出願はロシア語で記載される。その他 の出願書類はロシア語又は他言語で記載される。出願書類が他言語で記載される場合は,ロシア語による翻訳文が出願に添付される。」と規定されています。この条文を読むと、ロシアへの出願では、出願時にロシア語の明細書が必要なように思われます。一方、こちらのサイトでは、他言語で出願した場合、出願から2ヶ月以内にロシア語での翻訳文を提出することが紹介されています。 

ウクライナ特許2

5.ユーラシア特許

   ロシアにおける特許権の権利保護の方法として、直接出願、又はパリ条約若しくはPCT条約に基づく優先権を主張する出願の他に、「ユーラシア特許」による権利保護の方法があります。以下に、こちらのウェブサイトの情報に基づきユーラシア特許を簡単に紹介します。

(1)ユーラシア特許とは
 ユーラシア特許制度は、1996年1月1日に発行された広域特許制度です、現在、ロシア連邦、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン及びトルクメニスタンの8か国が締結しており、これらの国の特許を一括で取得することができます。なお、ウクライナはユーラシア特許制度に批准していません。

(2)権利保護の対象
 以下の発明以外がユーラシア特許での権利保護の対象となります(特許条約規則3(4)、(5))。
(1) 科学理論及び数学的方法
(2) 経済的な機構・管理の手法
(3) 記号、手順、規則
(4) 精神活動の遂行方法
(5)アルゴリズムとコンピュータプログラム
(6) 集積回路の回路配置
(7) 建設建築及び土地開発の工事計画
(8) 製品の外観にのみ関する工夫又は美的要件を充足する目的の工夫
(9) 植物品種と動物育種
(10) 公序良俗に反する発明

 ユーラシア特許は、ロシア単独特許とは保護対象が若干異なっているようです。

(3)出願言語
 ロシア語及び他言語で出願することができますが、他言語の場合、出願日から2ヶ月以内にロシア語での翻訳文を提出する必要があります(特許条約第2条(6))。 

6.今後

   ウクライナは、今後EUへ加盟をするかもしれません。そのためウクライナについては、将来、EPO経由で特許出願をすることができるかもしれません。ただしウクライナが今後どのような状況になるかは、現時点では全く読めません。そのためウクライナ危機の状況を常に把握する必要があると思われます。

7.まとめ

 このように、現在のところ、ロシア及びウクライナへはEPO経由で出願をすることができないので注意が必要です。そしてどちらも、権利保護の対象となる発明が日本と異なるようです。そのため、どのようなクレームで出願をするかを十分に検討する必要があると思われます。兎にも角にも国が平和な状態で国による制限なしに特許権を行使できる状態でないと、特許出願をする意味がないと思われます。いち早くこのような状態になってもらいたいものです。そして、出願をする際にも費用に見合ったリターンがあるかを十分に見極める必要があります。この見極めは各国の特許法に精通したプロに相談をすることが必要です。

 IPOMOEAは各国のプロに繋がりを持っています。旧ソ連の国に出願をご検討の際にはお気軽にご相談ください。また、IPOMOEAはウクライナの人々が戦争や紛争などのない平和な生活に戻れるよう祈っています。

 No war. 

  詳しくはこちら 

特許調査レポートのサンプルをご紹介

今すぐ無料で問い合わせる

報告書作成例は可能な範囲でご提示させて頂きますので、お気軽にお問い合せください。

特許翻訳・技術翻訳IPOMOEA Co.,Ltd.

  • Copyright © IPOMOEA Co., Ltd. All Rights Reserved.

Contact Us

  • 株式会社 IPOMOEA
    〒 924-0871
    石川県白山市西新町1133 (305)

  • 076-220-7091

  • 【受付時間】平日 10:00~18:00

Site Map