中国ブロックチェーン特許報告2020レポートより|登録特許調査

  アリババグループのアリペイや、テンセントの子会社のテンセント・ミュージック・エンターテイメント、バイトダンス(未公表)などがNFTのためのプラットフォームをローンチしたというニュースが最近相次いで公開され、中国のブロックチェーンに関するニュースがますます世界を賑わせています。

  中国商務部からは8月21日付けで『第14次5か年計画期間における商業分野における標準化体系構築の強化に関する指導意見書』が公表され、商取引における標準化を実現する手段として、デジタル技術応用のための標準システム(高水準のオープンプラットフォームなど)の構築、ビッグデータの全プロセスを管理するための統一基準の確立、5G、人工知能、モノのインターネット、ブロックチェーンなどの新技術の標準的な応用の促進が挙げられています(全文はこちら)。

  今週公表された日本特許庁による『ビジネス関連発明の最近の動向について』(2021年8月)によると、ビジネス関連発明に関して特許出願件数が多かった分野が、「サービス業一般」、「EC・マーケティング」、「管理・経営」の3分野であり、これらに続いて規模が大きくかつ近年出願件数が増加している分野が「金融」(フィンテックを含む)でした。また国別のビジネス関連発明の出願動向をみると中国の出願件数が急増しており、2018年の出願件数は5万件を超えているとのことでした(全文はこちら)。 

ビジネス関連発明出願推移
ビジネス関連発明分野別推移

  こうした状況から中国ではブロックチェーン技術に関する特許が多数出願されていることが想定されたので、実際の出願状況がどのようになっているのか調べてみました。「零壹财经・零壹智库」(零壹投資コンサルティング有限公司が提供する金融&科学技術情報サービスプラットフォーム)から『中国ブロックチェーン特許報告2020年』というレポートが公開されていたので、これをベースに最新の特許出願状況を紹介します(全文はこちら)。 

もくじ

1. 『中国ブロックチェーン特許報告2020年』

2. 登録された特許件数と技術分野

3. 中国ブロックチェーンの今後の発展

4. まとめ

1.『中国ブロックチェーン特許報告2020年』


1) 中国ブロックチェーン特許出願の全体の状況

『中国ブロックチェーン特許報告2020年』の概要を以下に記載します。なお、この特許調査において使用されたキーワードや分類コードは、このレポートには公開されていませんでした。

2020年には中国のブロックチェーン特許の出願件数の累計が3万件を超え、世界全体(5.14万件)の58%を占め、米国(1.21万件)の2.5倍となりました。4,100社以上の企業が特許出願を行っています。これらの特許出願の90%以上が2018年から2020年に集中しており、この期間に合計で27,200件の特許が出願されました。2020年には1,257社から約8,200件の特許が出願されました。出願推移を下図に抜粋します。 

中国ブロックチェーン特許

2020年のブロックチェーン特許出願件数上位10社を下図に示します。

中国ブロックチェーン上位出願企業

  2020年に出願された特許は、金融、決済、商取引、ビジネスサービス、デジタル資産、交通・輸送、医療、法律、電気・エネルギーなど26の分野をカバーしています。最も多く出願された分野は金融分野で、285社から出願され、決済分野では221社、商取引分野では209社、ビジネスサービス分野では173社、デジタル資産分野では140社、交通・輸送分野では118社から出願されました。

  一方、出願企業数が少なかった分野として、医療分野では83社、法律分野では55社、電力・エネルギー分野では51社から出願されました。また、農業、自動車、政府、教育、ソリューション、旅行などの分野では、特許出願企業数がいずれも50社以下でした。

  2019年の特許産業の分布と比較すると、金融、決済、商取引、デジタル資産、交通・輸送、法律など16分野で出願率が大きく下がり、これら分野で特許を出願する企業の割合が減少しました。金融は2019年の24.39%から22.67%へと1.72ポイント減少、決済は24.02%から17.58%へと6.44ポイント減少、デジタル資産は14.22%から11.14%へと3.09ポイント減少、残りの13分野は1ポイント以下の減少となりました。

  一方、ビジネスサービス、医療、電力・エネルギー、農業、政府などの残りの12分野では、出願率が増加する傾向が見られました。医療は2019年の4.99%から6.60%へと1.61ポイント増加、電気・エネルギーは2.74%から4.06%へと1.31ポイント増加が見られました。

  これは、産業用ブロックチェーンの応用実践領域がますます多様化していることを示しているのかもしれません。この技術は多くの分野でデジタルトランスフォーメーションの中核手段の1つとなっており、今後はデータの保存、偽造防止やトレーサビリティ、プライバシーやセキュリティなどの分野で広く利用されることが期待されています。 

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2) 特許出願の各分野における特徴

a. ブロックチェーン+金融
  中国で最初にブロックチェーン技術分野に参入したのは金融業界であり、2018年より前にデジタル化とインテリジェント化を提案していました。ブロックチェーン技術は、非改ざん性、分散化、追跡可能性などの特徴により、金融ビジネスプロセスの効率的な簡素化、運用コストの削減、データ品質の向上、不正分析コストの削減、リスク管理能力の強化などが可能であり、銀行、証券、保険のビジネスに適用されてきました。

  2020年、中国では285社が「ブロックチェーン+金融」に関する特許を出願し、同年のブロックチェーン特許出願企業数全体の22.67%を占めました。2019年との比較では1.72ポイントの減少です。金融分野で特許出願件数の多かった10社を以下のグラフに示します。 

中国ブロックチェーン特許と金融

  この2年間、金融業界におけるデジタルトランスフォーメーションの必要性に伴い、金融機関に加えてインターネットIT大手やフィンテック企業などが参入し、激しい競争が繰り広げられています。一方で、リスクやコンプライアンスの面で制約の多い金融という特殊性から、ユーザーのペインポイントに真の意味で到達できていない企業もあります。ほとんどの企業は、主にサプライチェーンファイナンスや受取手形などの事業を中心にブロックチェーン技術の研究開発を行っており、この分野の製品の深刻な同質化を招いています。このため一部の企業は戦略的レイアウトを変更し、金融分野への投資を縮小しました。

b. ブロックチェーン+デジタル資産
  デジタル資産は、中国や世界におけるブロックチェーンの主要な研究分野の1つです。中国中央銀行は2014年に研究チームを設置し、デジタル通貨の発行や業務運営の枠組み、デジタル通貨のキーテクノロジーなどの課題について詳細な調査を行いました。その3年後の2017年には、中央銀行が深圳に「デジタル通貨研究所」を設立し、2019年には国務院がデジタル通貨の開発を正式に承認しました。

  2020年に商務部は『サービス貿易の革新的発展のためのパイロットプログラムを包括的に深化させるための総合計画』を発表し、北京、天津、河北省、長江デルタ、広東、香港、マカオの大湾岸地域、中国中西部のパイロットエリアでデジタル人民元のパイロットプロジェクトを実施することを提案しました。

  この方針により、2020年末までに中国では累計687社が「ブロックチェーン+デジタル資産」に関する特許出願を行い、合計で2,090件の特許を取得しています。このうち、2020年に特許出願を行った企業は141社で、合計312件の特許を取得しています。特許出願件数の多かった10社を以下のグラフに示します。 

中国ブロックチェーン特許とデジタル資産

  過去2年間の特許出願状況を見ると、デジタル資産への注目度は低下しており、この分野のブロックチェーン特許出願率は2年連続で減少しています。2018年、ブロックチェーン特許を出願した企業のうちデジタル資産特許を出願した企業は237社で、14.94%を占めていましたが、2020年にはその割合は11.22%に低下しました。

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c. ブロックチェーン+スマート交通・物流
  2019年に国務院は『交通強国建設要綱』を発表し、ブロックチェーンなどの新技術を交通業界に深く浸透させ、インテリジェント交通を発展させることを提案しています。また、2020年には工業情報化省運営監視調整局が『物流産業と製造業との深い融合と革新的な発展を促進するための実施計画』を発表し、ブロックチェーン技術を通じた物流情報の共有や物流信用システムの構築を提案しています。

  このことから、スマートトランスポーテーションやスマートロジスティクスを構築するためのブロックチェーン技術の重要性がわかります。2020年末までに、中国では累計497社が合計1,092件の「ブロックチェーン+交通」に関する特許を出願しました。2020年に特許出願を行った企業は118社で、合計221件の特許を取得しています。特許出願件数の多かった10社を以下のグラフに示します。 

中国ブロックチェーン特許と交通

  過去2年間の特許出願推移を見ると、輸送・物流分野は少し減少しています。2019年は151社がこの分野で特許を出願し、ブロックチェーン特許出願企業全体の9.42%を占めていましたが、2020年は118社がこの分野での特許を申請し、全体の9.39%を占め、0.03ポイント減少しました。

d. ブロックチェーン+スマート医療
  医療業界ではさまざまな医療サービス提供者が、ユーザーの健康データ、医薬品情報、電子保険証書などの大量の機密情報を保管しています。しかし、データ共有には、医療情報のセキュリティや、患者の個人医療情報に関わるプライバシーの問題などの多くの問題があり、その結果、医療業界での情報活用率は低くなっています。ブロックチェーン技術により、医療情報を適切な経路で使用することを保証するだけでなく、患者のプライバシーを確保することも可能になります。最も一般的な応用シナリオは、ブロックチェーン技術に基づく電子医療記録、医薬品のトレーサビリティなどです。

  同時に、健康福利委員会や医療管理局などは、医療業界がブロックチェーン技術を活用して情報化を推進することを奨励する政策を数多く発表しています。2020年10月、保健衛生委員会は「全国民の健康のための標準化された情報システムの構築を強化する意見」を発表し、医療分野におけるブロックチェーンの応用シナリオを探り、研究し、情報サービス標準の開発を加速し、ブロックチェーンの医療産業との統合と応用を標準化して指導することなどを提案しています。

  2020年末までに、中国国内で「ブロックチェーン+医療」に関する特許出願を行った企業は累計346社で、特許取得件数は877件に達しています。その中で、2020年に特許出願を行った企業は83社で、特許取得件数は251件でした。特許出願件数の多い10社を以下のグラフに示します。 

中国ブロックチェーン特許と医療

  特許出願の観点からも、「ブロックチェーン+医療」は新たな発展のトレンドになると予想されます。2020年には、83社がブロックチェーン+医療の特許を申請し、同年のブロックチェーン特許申請に関わる企業全体の6.60%を占め、2019年と比較して1.61ポイント増加しました。これに加えて、関連特許の割合も1.71%から3.06%と1.35ポイント増加しました。

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e. ブロックチェーン+法律
  また、「ブロックチェーン+法律」は最も一般的な応用分野の一つです。応用シナリオには、ケース管理、侵害の検出、IPRの取引と共有、著作権の検証、遺言の処理、契約の締結などがあります。

  2020年末までに、中国では累計204社が合計415件の「ブロックチェーン+法律」に関する特許を出願しています。このうち、2020年に特許出願を行った企業は55社で、合計93件の特許を取得しています。特許出願件数の多かった10社を以下のグラフに示します。 

中国ブロックチェーン特許と法律

  過去3年間の特許出願状況から判断すると、法律業界のブロックチェーン技術の応用は弱く、この分野の特許を出願している企業は毎年80社を超えていません。また、ほとんどの企業が年間1件の特許出願しか維持しておらず、2019年の75%に対し、2020年は80%の企業が1件の特許出願しかしていません。

暗号通貨

2.登録された特許件数と技術分野

  以上で中国ブロックチェーンの2020年の特許出願を紹介しましたが、ここでは2012年から2021年8月時点までの出願状況と、登録されている特許に絞り込んだデータを見てみたいと思います。

  ブロックチェーンに関する特許を抽出するにあたり、中国特許庁が運営する特許検索サイト「PSS-system」を利用しました。キーワードと分類コードには、こちらのレポートを参照に、それぞれ「区块链」、「G06F、G06Q」などを設定しました(全文はこちら

  このように調査した結果、公開特許が33,009件、登録特許が4,309件抽出されました。このうち登録特許の出願人上位を下図にまとめました(PSS-systemの出願人集計機能を利用)。

中国ブロックチェーン登録特許

    登録特許4,309件の技術分野の内訳を下図に示します(PSS-systemの技術分野集計機能を利用)。

中国ブロックチェーン特許分野

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3. 中国ブロックチェーンの今後の発展

  ブロックチェーン技術は分散型の性質を持ちますが、中国の政治システムは高度な中央集権的な性質を持ちます。このため中国のブロックチェーンに対するアプローチは特有なものとなっています。暗号資産やデジタル人民元を取り巻く問題もありますが、実際には中国政府のブロックチェーンに対するアプローチは、こうした問題にとどまらず、非常に包括的なものであることがわかります。省エネルギーから都市管理、法執行に至るまで、さまざまな分野での技術の応用を推進しています。またブロックチェーンに大規模な投資を行い、一党独裁体制に適合する形でブロックチェーンを再構築しようとしています。今後も中国のブロックチェーン技術はさらに発展を遂げることが予想されます。

4. まとめ

  IPOMOEAでは、より詳細な情報をお届けできるほか、各種ニーズに応じた中国特許調査サービスをご提供できます。お気軽にご相談ください。

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