中国で未来技術学院が新設された
北京大学の特許出願を調査・分析

  2020年5月に中国教育部(文部科学省に相当)は、大学において「未来技術学院」という国家の一流人材を育成するためのプロジェクトを提唱しました。

未来技術学院設置の目的は、人工知能(AI)技術、量子情報科学、データサイエンスとビックデータ、海洋技術を含む重要技術分野の研究開発強化に力を入れ、「製造強国」「サイバー強国」などを実現することにあると言われています。そして今後10~15年の間に破壊的技術の開発、各障壁からのブレークスルー、先見性の確保を実現して持続的発展をリードできる技術革新リーダーの育成に注力し、「中国で製造」を「中国で創造」に転換することで、さらなるグレードアップを目指すとしています。


(参考記事) https://www.epochtimes.jp/p/2021/05/73794.html

もくじ

1. 中国で2021年に「未来技術学院」が設置された12校

2. 北京大学の特許出願状況と技術動向

3. 北京大学が共同出願を行った機関と企業

4. 北京大学の最新技術情報

5. 中国の大学における研究と特許の現状

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1. 中国で2021年に「未来技術学院」が設置された12校

   中国教育部はこのほど、2021年未来技術学院設置の第1弾として12校を選出したことを発表しました。12校のリストには、北京大学、清華大学、北京航空航天大学、天津大学、東北大学、ハルビン大学、上海交通大学、東南大学、中国科学技術大学、華中科技大学、華南理工大学、西安交通大学といった地方の名門大学が名を連ねました。各大学は、AI、ヘルステック、スマートシティなど、成長性が高く、将来的にイノベーションをもたらすと期待される技術に狙いを定め、研究機関単体ではなく企業や投資機関などのリソースも結集させ、4年かけて体制を構築する方針を公表しました。12校のリストと各校が取り組む重点分野を以下に示します。

(参考資料)https://36kr.jp/139787/


本記事では、上記12校のうち北京大学に注目して、その特許出出願状況を調べてみました。調査項目のうち出願件数、技術動向、共同出願企業についてご紹介します。また北京大学の最新技術情報や中国の大学の特許情報もあわせて記載します。

2. 北京大学の特許出願状況と技術動向

北京大学の特許出願状況

上記グラフは、北京大学の2012年~2121年までの10年間に中国で公開された特許出願件数です。北京大学の特許検索にあたり、データベースに世界知的所有権機関(WIPO)が提供する特許データベースPATENTSCOPEと、中国特許庁が提供する特許データベースPSS-Systemを使用しました。出願人名に「北京大学」と設定し検索したところ、11,750件が抽出されました。

北京大学の特許出願技術動向

技術分野を抽出するにあたり、国際特許分類(IPC。特許出願された発明を分類するため国際的に統一された分類であり、特許公報などの文献に表示されています)を利用しました。なお、このIPCは1つの特許に対して複数付与されることもあります。

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3. 北京大学が共同出願を行った機関と企業

  左の表は、出願人名に北京大学と連名になっていた機関と企業(国営、民間)について表にまとめたものです。北京大学の出願合計11,750件のうち、共同出願人が大学などの学校になっていた出願を除き、機関や企業が共同出願人となっていた出願1,507件を出願して順位付けしました。

1位の北大方正集团有限公司は、1986年に北京大学によって設立された企業です。中国のIT、医療、製薬産業の発展に欠かせないコアテクノロジーを所有および創造し、国際的な投資を受けて、IT、医療・製薬、不動産、金融、商品取引などの事業を展開しています。

2位の中国科学院化学研究所は、1956年に設立された企業です。中国が緊急に必要としている主要な戦略的目標を持つ革新的な研究に焦点を当て、ハイテクの応用とイノベーションとともに発展する、基礎研究を中心とした学際的な総合研究機関です。

3位の深圳市大疆创新科技有限公司は、2006年にされた企業です。無人航空機制御システムとドローンソリューションの開発と製造を行う世界有数の企業であり、世界100カ国以上に顧客を持っています。

以上が3位までの団体の簡単な説明ですが、日本企業では、富士通やシャープ(表の上位圏外)との共同出願が抽出されました。 

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4. 北京大学の最新技術情報

  北京大学は未来技術学院において、生命、健康、疾病予防技術に焦点を当て、科学技術の統合、医工連携などを推進し、質の高い教授チームの結成、人材育成システムの革新、研究機関や企業との交流と協力を強化し、産学連携教育の新しいパターンの形成を目標に取り組むこととしています。

  こうした研究において特に注目しているのがバイオメディカルイメージング技術です。従来のバイオメディカルイメージングでは、CTスキャナ、MRI、超音波などの2D画像データを収集する必要がありました。しかしこのプロセスは煩雑で時間がかかり、精度も低く、患者の臓器や組織の状態を正確に反映していないため、医師の診断に影響を与えることもありました。北京大学の未来技術学院では、これらの従来技術の課題を克服することに取り組みます。こうした技術の例としては、ホログラフィーが挙げられます。ホログラフィーを使って患者の体の一部や臓器の3D画像をリアルタイムで作成し、医師がそれを動かしたり、拡大したり、操作したりすることができるようにします。このようにテクノロジーを持続的に進歩させ医療業界の技術力の底上げを図ることとしています。


(参考記事)https://www.163.com/dy/article/GDIL4Q2J05373E3I.html


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5. 中国の大学における研究と特許の現状

  技術の進歩と特許は切っても切れない関係ですが、中国の特許については、商業化率が低い、あるいは産業化率が低いと言われています。

  中国の特許庁である中国国家知識産権局(CNIPA)が発表した2019年の特許調査報告書によると、中国の大学では、2019年の特許出願件数のうち特許登録件数が26.5%でした。そのうち特許の産業化率は3.7%であり、ライセンス率は2.9%でした。中国の企業では、産業化率が45.2%、ライセンス率が6.1%であり、大学の特許産業化率とライセンス率は企業と比較すると著しく低いことがわかりました。CNIPAの報告書によると、中国の研究機関は、2019年の中国の特許登録件数全体の7.8%を占めていますが、産業化率が18.3%で、ライセンス率が2%であり、同様に低い数値となっています。

  一方、国家科学委員会のデータによると、米国の大学は2018年の特許登録件数全体の4.0%しか占めていませんが、『Commercialization of university inventions: Individual and institutional factors affecting licensing of university patents』(Yonghong、WuaEric W.Welchb、Wan-LingHuangc著)、『Life of a Stanford Invention』(スタンフォード大学技術ライセンス部著)によると、米国の大学特許の約40~50%が商業利用のためにライセンスされていることがわかります。

  このデータは、中国の大学や機関の特許のほとんどが役に立たないとみなされているか、放棄されていることを示しています。CNIPAの調査によると、大学や研究機関の特許出願は、主に昇進、賞の獲得、補助金などの非革新的な動機によって行われていることを認めており、こういった状況がここ数十年の中国における特許出願急増の原動力になっているという説を裏付けています。さらに、『2019年中国专利调查报告』(CNIPA)によると、中国の商業化の質は、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国に比べて著しく低いランクにあります。つまり、中国ではこれらの先進国に比べて、特許登録件数全体に対して有効な特許の比率が低く、維持率も低く、有効な特許1件あたりのロイヤリティやライセンス料の比率も低いということになります。

  2019年に中国がPCTによる国際特許出願数で世界トップになったとしても、中国のPCT出願件数とイノベーション先進国の出願件数との間には、特許の質に大きなギャップが存在しています。国際調査報告の国際的に比較可能な引用データ(『Measuring China’s Patent Quality: Development and Validation of ISR Indices』(Böing, Philipp、Elisabeth Müller)に基づいて、研究者は「中国のPCT特許出願は、中国以外の国の品質ベンチマークの3分の1にしか達していない」と結論づけています。

  以上のことから、中国は特許出願や特許権付与が急速に進んでいるにもかかわらず、特許の質が低いことが紛れもない弱点となっていることがわかり、この問題が、中国が真の特許大国になることを妨げています。中国が特許の量と非革新性を重視するのではなく、質と革新性を重視するようになれば、チャンスは大きく広がります。米国と中国の技術戦争が続いていることで、中国は、技術と経済の成長のために真の国家的イノベーションを追求しなければならないという大きな圧力を受けています。イノベーション主導の高品質な特許出願への移行を実現できれば、この圧力に対処することができるようになるでしょう。

  しかしながら、また別の課題も存在します。中国の官僚主義的な研究システムには、研究成果の質よりも量を優先するという根深い問題があります。これにより低レベルで冗長な最終的に価値のない研究成果が生み出されることが多いため、この移行が完全に実現することは難しいかもしれません。中国が真の特許大国になるチャンスは、短期的には、ファーウェイ、BOEテクノロジーグループ、OPPO、ZTE、DJI、アリババなど、情報通信技術分野の主要なイノベーション企業(「Statistical Country Profiles」(WIPO)に基づく)が持続的に成長することにかかっています。これらの企業は、中国をPCTランキングのトップに押し上げた特許のうちかなりの数を占めています。



(参考記事)

https://www.cigionline.org/articles/what-do-chinas-high-patent-numbers-really-mean/
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166497214001266
https://web.stanford.edu/group/OTL/documents/fy15OTL_overview.pdf
http://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=40213&colID=88
https://www.zew.de/publikationen/measuring-chinas-patent-quality-development-and-validation-of-isr-indices
https://www.wipo.int/ipstats/en/statistics/country_profile/profile.jsp?code=CN

4.まとめ

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