米国出願でミーンズ・プラス・ファンクションをうまく使用するには?

 ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、発明を構造ではなく機能面で特定したクレームです。ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、具体的な構造を記載せずとも発明を特定できるため、便利な手段です。しかしながら、米国でのミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、権利範囲が狭くなり得るというデメリットもあります。

 この記事では、ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームについての概要、及び上手な利用方法について説明します。 

もくじ

1. ミーンズ・プラス・ファンクションとは?

2. ミーンズ・プラス・ファンクションを使用したクレームの例

3. 米国出願におけるMPFの上手な活用方法

4. まとめ 

1. ミーンズ・プラス・ファンクションとは?

  物を台に固定する方法として、何を思い浮かべますか?

 物に穴が空いていれば、ボルト及びナットを用いて固定することができるかもしれません。物が磁性体であれば、台に磁石を配して固定することができます。接着剤などを用いて不可逆に固定することも考えられます。真空吸着を利用することもあります。

 日本出願では、固定することが重要であって、その方法には特に限定されない場合、「固定手段」という発明特定事項を使用することが少なくないと思われます。「〜(する)手段」は、物を構造ではなく、機能で特定する発明特定事項です。このような記載は具体的な物を特定せずに発明を特定することができるので、非常に便利といえます。

 さて、この「手段」による発明の特定は、米国でも許されています。「手段」は、英語では「means」と訳されます。「Aを固定する手段」は、例えば「means for fixing A」と翻訳できます。

 具体的には、米国特許法112条f項には

「組合せに係るクレームの要素は、その構造、材料又はそれを支える作用を詳述することなく、特定の機能を遂行するための手段又は工程として記載することができ、当該クレームは、明細書に記載された対応する構造、材料又は作用及びそれらの均等物を対象としているものと解釈される」

と明記されています。

 「特定の機能を遂行するための手段又は工程として」、すなわち機能的に要素を特定したクレームを、ミーンズ(又はステップ)・プラス・ファンクション(Means (or Step) plus Function:以下MPF)クレームと言います。

 具体的には、以下の3要件(A)から(C)の全てを満たすクレームがMPFクレームであると解釈されます。
 A. クレーム限定が「means」または、「means」の代用として使われる代用語を使う、
 B. 「means」またはその代用語が、一般的には「for」またはその他の接続語で接続された(例:「means for」)、機能的表現で修飾されている、かつ
 C. 「means」またはその代用語が、クレーム機能を実施するのに十分な構造または材料で修飾されていない。

 具体的な構造で特定するよりも機能的に特定した方が文言上は権利範囲が広くなりますが、米国では、上記規定により、その権利範囲は明細書に具体的に記載された範囲に制限されます。

 先の「固定手段」の例ですと、明細書の中に、ボルト及びナットで固定することしか記載されていない場合には、たとえクレームで「means for fixing A」と記載していても、この発明特定事項で特定される権利範囲は、ボルト及びナットに限定されることになり、磁石を用いた固定や、接着剤を用いた固定は権利範囲外となります。 

ミーンズプラスファンクション

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2. ミーンズ・プラス・ファンクションを使用したクレームの例

(1)meansを使わなくても「MPF」?

 MPFの代表的な例は、「means for」や「step for」であり、以前はこれらの表現を用いずにクレームドラフティングすることで、MPFクレームとして解釈されるのを避けることが慣例として行われていました。しかし、2015年のCAFCによる大法廷(en banc)判決〈Williamson v. Citrix Online, LLC(Fed. Cir. No. 2013-1130)〉により、この慣例が崩れ去りました。

 この判決では、MPFクレームであるか否か(当時は、112条6項が適用されるか否か)は、”means”を使っているかだけでなく、「クレームの用語が当業者にとって構造の名称として十分に明確な意味を持つと理解できるか否か」であるとしています。また、この判決では、クレームが“means”を含まない場合でも、その用語が「十分に明確な構造を記載していない」、または「当該機能を実施するための十分な構造を記載することなく機能を記載」していることが証明された場合には、meansを含まないクレームはMPFクレームが適用されない、という本判決以前の強い推定が覆るとしています。

(2)MPFクレームと解釈され得る代用後

 このように、クレームの用語が当業者にとって構造の名称として十分に明確な意味を持つと理解できないと、MPFクレームであると解釈され兼ねません。

 このように解釈され得る用語としては、例えば以下のような用語が挙げられます。
 ・unit for〜(〜するユニット、〜用ユニット)
 ・apparatus for〜(〜する装置、〜用装置)
 ・mechanism for〜(〜する機構、〜機構)
 ・module for〜(〜するモジュール、〜用モジュール)
 ・device for〜(〜用デバイス)
 ・member for〜(〜用部材、〜部材)

 対訳例を見ると、日本出願のクレームでよく用いられる用語であることがわかります。すなわち、日本出願の内容をそのまま翻訳して米国出願をする場合、クレームに機能的な発明特定事項が記載されていると、MPFクレームとなる可能性が非常に高いといえます。

(3)構造的な用語の例
 逆に、MPFクレームと解釈されにくい用語としては、以下のような用語が挙げられます。
 ・circuit
 ・digital detector
 ・reciprocating member
 ・detent mechanism
 
 前半2つの用語は理解しやすいのですが、注目すべきは後ろの2つです。先に示したように、member forやmechanism forは、MPFと解釈され得る用語であるのに対し、memberやmechanismの前に名詞(動名詞含む)がある場合、構造的であると解釈され得るのです。 

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3. 米国出願におけるMPFの上手な活用方法

 以上を踏まえ、MPFクレームの上手に利用する案を紹介します。

(1)あえて”means”又はMPFクレームと解釈される用語を用いる

 先に紹介した米国特許法112条f項には、MPFクレームは、明細書に記載された対応する構造、材料又は作用及びそれらの均等物を対象としているものと解釈される旨が規定されています。

 逆に捉えると、明細書に考えられるバリエーションをできる限り記載しておけば、”means”又はMPFクレームと解釈される用語は、明細書に記載したバリエーションを包含するものであると解釈され得るといえます。そのため、敢えて”means”又はMPFクレームと解釈される用語をクレームで用い且つ考えられるバリエーションを盛り込んだ実施例をできる限り明細書に記載することにより、クレームの記載はスマートにし、その権利範囲を出願時に考えられる範囲まで確保することが考えられます。

 ただし、出願当初明細書に記載していなかった具体的な構造を出願後に思いついた場合には、その具体的な構造を権利範囲に含められないことに留意が必要です。

 そして、MPFクレームの場合、明細書に記載された内容に限定されるだけでなく、機能を実行するための具体的な構造が明細書に十分に記載されていないと、不明瞭であるという拒絶理由を受けることがあります。そのため、敢えてMPFクレームとした場合、昨日を実行するための具体的な構造を、明細書に、できるだけ十分に、明確に、広範に記載すべきであるといえます。

(2)できるだけ具体的な構造を把握できるような用語を記載する
 先の例のように、memberやmechanismの前に名詞(動名詞含む)がある場合、構造的であると解釈され得るという事例があります。そのため、非構造的であると判断され得る用語を、「A for Ving」ではなく、「Ving A」のような用語に積極的に書き換えることを検討すべきであると考えます。

(3)”configured to”の使用の注意
 “configured to〜”は、「〜するように構成された」と訳すことができる表現であり、機能的な表現を構造的な表現に書き換える手段として、以前は頻繁に利用されてきました。

 ただし、この表現については、MPFクレームと同様に、明細書に具体的に記載された構造に限定されるという判例があります。そのため、安直に“configured to〜”を使用するのは避けるのが無難であると考えます。 

4.  まとめ

 このように、日本では一般的な「手段」を用いたクレームは、米国ではMPFクレームであるとして、明細書の記載に限定される恐れがあります。

 ただし、デメリットを把握しておけば、必要な権利範囲をカバーできるクレームを作成することもできます。MPFクレームと同じように解釈され得る”configured to”も、使い方によってはメリットもあるようです。

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