特許審査請求のタイミングを判断する方法(日本、米国、中国など)

 特許出願は、実体審査によって特許(許可)可能であるかが審査されます。特許発明を利用した技術を可能な限り早く事業化したい場合や、競争の激しい分野の出願の場合には、できるだけ早く審査をしてもらい迅速な権利化を図ります。

 一方、企業経営において、経済的負担を小さくしたい時期には権利化費用をできるだけ抑え、経済的余裕ができた際に権利化費用を計上したいといった場合もあります。この場合には、取り急ぎ審査着手の延期を図ります。

 このように、企業の知財戦略には適切なタイミングでの特許取得を図ることが重要です。特許法は国ごとに異なるため、審査タイミングを図る制度も国ごとに異なります。この記事では、五大特許庁(日、米、欧、中、韓)それぞれへの出願について、適切な審査タイミングの判断方法を紹介します。 

もくじ

1.   日本での審査タイミングの判断

2. 他国での審査タイミングの判断

3. まとめ

1.日本での審査タイミングの判断

(1)審査延期:審査請求の時期を調整する(審査延期申請制度はない)
 日本では審査請求制度がとられています。

 特許法第48条の2では、

特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。

と規定されています。

 審査請求は、出願日から3年以内に行うことができます(特許法第48条第3号第1号)。例えば、審査請求をできるだけ遅くすることにより審査着手を遅らせることができます。ただし、審査請求は何人でも可能(特許法第48条第3号第1号)であり、出願人以外でも可能です。そのため、滅多にない例ではありますが第三者に審査請求をされる可能性があります。

 一方、日本では、以下に説明する米中韓での審査延期(審査猶予)を申請する制度は今のところ存在しません。

(2)審査迅速化:①早期審査
 日本には、早期審査制度という、出願の審査を優先的に行ってもらえる制度があります。

 以下に該当する出願であれば、早期審査を申請することができます。

(1)実施関連出願
(2)外国関連出願
(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
(4)グリーン関連出願
(5)震災復興支援関連出願
(6)アジア拠点化推進法関連出願

 現在、早期審査を申請すると申請から平均3ヶ月以下で審査がされるとのことです。

(3)審査迅速化:②PPHプログラムを利用する
 他国の審査結果を利用して、日本特許庁に継続している出願について早期審査を受けることができる制度として、PPH(Patent Prosecution Highway、特許審査ハイウェイ)プログラムがあります。PPHプログラムは、簡単に述べると、第1国の審査結果を、第2国の審査に利用する制度です。ここでの第1国は、最先の出願を行った国に限られません。

 詳しくは、こちら

(4)まとめ
 以上のように、日本では、審査を延期してもらうための制度はなく、審査着手を延期してもらうには、必要に応じて審査請求を遅く行うという手段しかないようです。一方、審査を優先的に行ってもらうには、早期審査やPPHプログラムの利用などの手段を取ることができます。 

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2.  他国での審査タイミングの判断

(1)米国
(A)審査迅速化
 米国では、例えば以下の手続きで早期審査を受けることができます
(i) PPHプログラムの利用
(ii) 優先審査(Prioritized Examination(通称Track One)
(iii) 早期審査(Accelerated Examination)
 米国でのPPHは、日本でのPPHと同様です。米国での最もメジャーな早期審査の申請といってもいいと思われます。ただし他国で特許となったクレームに縛られる、というデメリットがあります。

 優先審査は、PPHプログラムの利用よりも早期に審査着手してもらえる手続きです。しかしながら優先審査は、4000ドルという高額な費用が必要であるというデメリットがあります。

 早期審査も、PPHプログラムの利用より早期に審査着手してもらえる手続きですが、「Examination Support Document」の提出が必要であり費用と手間がかかるというデメリットがあります。また早期審査は、禁反言の問題や近い先行技術を開示しなかった場合の権利行使不能となるので、あまり勧められる制度ではありません。

(B)審査延期
 米国では、審査着手の延期を申請することができます(Deferral of Examination:37 CFR 1.103(d)に基づく申請)。140ドルで申請をできるので、安価に審査延期をすることができます。延期申請期間は最大で3年です。

(2)欧州
(A)審査迅速化
(i)PACE
 欧州では、早期審査プログラム「PACE (Programme for Accelerated Prosecution of European Patent Application)」があります。PACEの申請は、調査段階および審査段階の両方において適切な時期に行う必要があります。また申請は調査段階および審査段階で各々一度きりであり、期間延長などによりPACEの対象から外れた場合には再度の申請は通りません。ただ現在、EPC規則161(2)の期間満了の日から6ヶ月以内に欧州拡張調査報告が発行されるため、調査段階でのPACEの申請は不要となっています。

(ii)PPHプログラムの利用
 PACE以外に欧州で早期審査を図る手段としては、PPHプログラムの利用が挙げられます。

(B)審査延期制度はない
 一方、欧州では審査延期を申請する制度はないようです。

(3)中国
(A)審査迅速化
(i)早期公開
 中国では、早期公開を申請した出願であれば、早期に審査をしてもらうことができます。ただし、日本と同様に審査請求制度を取っているので審査請求をすることが必要です。

(ii)PPHプログラムの利用
 中国でもPPHプログラムを利用することができます。

(iii)中国では、以下の出願に関しては優先審査を受けることができます。
(a)省エネルギー・環境保護、次世代情報技術、生物、高付加価値装備の製造、新エネルギー、新材料、新型エネルギー自動車、スマート製造などの国の重要な技術分野に係わる専利出願
(b)各省級および設区市級人民政府が重点的に奨励している産業に関係する出願
(c)インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの分野に関わり、かつ技術または製品の更新速度が速い出願
(d)専利出願人または復審の請求人が、実施の準備を完了している、またはすでに実施している、もしくは他人がその発明創造を実施中であることを証明する証拠を有している出願
(e)同一の主題に関し、中国に出願した後、他の国または地域に出願を提出した初めに中国に提出した出願
(f)国家利益または公衆利益に重大な意義があり、優先審査が必要と認められた出願

(B)審査延期制度
 中国では、米国と同様に、審査延期制度があります。具体的には、
 出願人は特許並びに意匠登録出願について審査延期請求を提出することができる。延期期限は、延期請求の効力が生じた日から1年、2年、または3年とする。
とされています。

(4)韓国
(A)審査迅速化
 韓国では、早期審査請求の制度があり、驚くべきことに出願から1ヶ月以内に登録になることもあるそうです。

 早期審査請求をできる出願は、以下の4つがあります。

(a) 第3者が業として発明を実施している且つ出願公開をしている場合
(b) 特定分野に関連する出願、実施関連出願の場合
(c) PPHを利用する場合
(d) 指定された先行技術調査専門機関に先行技術調査を依頼した場合

(B)審査猶予申請制度
 一方、韓国では審査猶予申請制度があり、審査を延期してもらう枠組みがあります。

 具体的には、審査猶予希望時期を記載した審査猶予申請書を出願審査請求日から6ヶ月以内に提出します。なお、願書や審査請求書にその旨を記載して同時提出も可能です。審査猶予希望時期は、審査請求日より18ヶ月以後および出願日より5年以内で指定可能です。 

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3.まとめ

 審査タイミングを図る手段について5大特許庁の国ごとに簡単にまとめると、以下のようになります。

(1) 審査促進
 日、米、中、韓…早期審査制度あり(※欧州を含め、5大特許庁はPPHプログラムの利用が可能)

(2) 審査延期
 米、中、韓…審査延期の申請可能
 日、欧…審査延期の制度なし(日本は、審査請求のタイミングを図ることにより、ある程度は審査延期が可能)

 このように、審査タイミングの調整方法は、国によって大きく異なります。したがって、審査タイミング、ひいては権利化のタイミングを図りたい国の制度を十分に理解する必要があります。そして、適正な手続きを行わなければ、審査の迅速化や審査の延期の申請は認められません。したがって、申請は、各国の法律に精通した代理人(特許事務所)に依頼するのが間違えのない方法です。

 IPOMOEAは、国内外の特許事務所と連携をしております。各国での早期審査および早期延期について、より詳しくお知りになりたい場合、弊社にご相談いただければ適切な特許事務所を紹介いたします。

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