特許権の消尽を判例から読み解く|IPOMOEA公式ブログ

 最近、フリマアプリやリサイクルショップなどでの不用品のリサイクル販売が盛んに行われています。当然、不用品を販売した際は代金を受け取ります。

 さて、フリマアプリやリサイクルショップでは、一世代、二世代前のスマホやPCなども販売されています。このような物品には特許技術が使われていることが多く、特許権の存続期間(出願から20年)が切れていない場合が多いです。代金を受け取るのですから、これらの物品の販売は「業」として特許発明を実施している、と解釈され得るとも言えます。

 しかし、実際にフリマアプリやリサイクルショップでの販売が特許権侵害の問題となることは、ほぼないと思われます。これは、これらの販路での物品については、特許権が「消尽」していると解釈されるからです。この記事では、このような特許権の消尽について紹介します。 

もくじ

1. 特許権の消尽とは?

2. BBS最高裁判決

3. インクタンク大合議判決

4. まとめ 

1.特許権の消尽とは?

 我々は、例えば、最新家電などの物品を大型量販店やECサイトで購入したりします。当然、このような最新家電には特許技術が使用されている場合が殆どです。特許発明の「実施」には物の譲渡が含まれていますので、特許権者やライセンシーから譲渡を受けた(販売された)大型量販店やECサイトが消費者への販売が特許権侵害に当たるとすると、取引に支障をきたします。特許発明の販売が滞ると、特許権者にとっても不利益となります。また、特許権侵害が認められるとすると、特許権者が二重の利益を得ることになってしまいます。そこで、特許発明の実施品がいったん適法に流通に置かれたときは、その実施品を更に第三者に販売する行為は特許権の効力が及ばないと解釈されています。

 こうして特許権の効力が特定の物品に対して及ばなくなることを「特許権の消尽」と呼ばれています。冒頭に紹介したリサイクルでは、適法に購入した物品を販売するのであれば特許権が既に消尽していると解釈されるので、特許権侵害に当たらないといえます。一方、通常想定される使用や修理を超えて「再生産」した場合には、特許権侵害となる場合があります。次の章では特許権の消尽に関する判例を紹介します。 

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2.  BBS最高裁判決(最判平成9年7月1日)

 この事件は、BBS社の自動車用アルミホイールの特許に関する事件です。BBS社はドイツ及び日本において、自動車用アルミホイールに関する同一発明について特許権を有していました。BBS社は、特許発明を実施して生産した製品をドイツ国内で販売しました。そして、並行輸入業者がこの製品を購入して日本に輸入しました。また、輸入した製品を業者が日本国内で販売しました。それに対してBBS社は、並行輸入した業者及び日本で販売した業者に対し、日本での特許権に基づき差し止め請求及び損害賠償請求をしました。

 結論としては、原告の請求は棄却されました。

 まず、傍論として、特許権者又は実施権者が特許製品を国内で譲渡した場合、特許権が「消尽」し、その譲受人又は転得者が業として当該特許製品を譲渡、使用等をする行為は特許権侵害とならないことが判事されました。いわゆる「国内消尽」といわれているものです。

 ただし、この事件は、輸入が絡んでいるため、

 「特許権者が国外において特許製品を譲渡した場合には、...特許権者は,特許製品を譲渡した地の所在する国において...対応特許権を有する場合であっても、我が国において有する特許権と...対応特許権とは別個の権利であることに照らせば、特許権者が対応特許権に係る製品につき我が国において特許権に基づく権利を行使したとしても、これをもって直ちに二重の利得を得たものということはできない」

と、国内消尽と直ちに同列に論じることはできないと判事されています。

 そして、最高裁判決では上記のように指摘した上で、「国際消尽」が認められるか否かを以下のように判事しています。

 「我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が、国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間で右の旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。すなわち、(1)さきに説示したとおり、特許製品を国外において譲渡した場合に、その後に当該製品が我が国に輸入されることが当然に予想されることに照らせば、特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、我が国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきである。(2)他方、特許権者の権利に目を向けるときは、特許権者が国外での特許製品の譲渡に当たって我が国における特許権行使の権利を留保することは許されるというべきであり、特許権者が、右譲渡の際に、譲受人との間で特許製品の販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を合意し、製品にこれを明確に表示した場合には、転得者もまた、製品の流通過程において他人が介在しているとしても、当該製品につきその旨の制限が付されていることを認識し得るものであって、右制限の存在を前提として当該製品を購入するかどうかを自由な意思により決定することができる。そして、(3)子会社又は関連会社等で特許権者と同視し得る者により国外において特許製品が譲渡された場合も、特許権者自身が特許製品を譲渡した場合と同様に解すべきであり、また、(4)特許製品の譲受人の自由な流通への信頼を保護すべきことは、特許製品が最初に譲渡された地において特許権者が対応特許権を有するかどうかにより異なるものではない」。

 そして、この判示を本事件に当てはめ、以下のように判示しています。
 「本件各製品は、いずれも本件特許権を有する上告人自身がドイツ連邦共和国において販売したものである。そして、本件においては、上告人が本件各製品の販売に際して、販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意したことについても、そのことを本件各製品に明示したことについても、上告人による主張立証がなされていないのであるから、上告人が、本件各製品について、本件特許権に基づいて差止めないし損害賠償を 求めることは許されないというべきである」

 要するに、この判示は、上記の通り特許権者が国外において譲渡した特許製品については、「販売先ないし使用地域からわが国を除外する旨が譲受人と合意した場合」又は「各製品に販売先ないし使用地域からわが国を除外する旨が明示されている場合」を除き、特許権を行使することができない、というものであると思われます。上記合意又は明示がない場合、特許権者による国外譲渡は「黙示の授権」があったものとみなされるそうです。ただし、この「黙示の授権」は「消尽」とは異なることに留意は必要です。

 なお、本件は、特許権者が特許発明を直接侵害品を譲渡した場合の判例であり、間接侵害品を譲渡した場合に消尽が成立するか又は黙示の授権があったものとみなされるかは、別の問題となります。 

消尽ホイール

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3.  インクタンク大合議判決(平成19年11月8日)

 この事件は、消尽に関する判例としては最も有名な判例なのではないかと思われます。この事件は、インクタンクに関する特許を有する特許権者が、インクが消費されたインクタンク(特許製品)を回収し、それにインクを再充填して販売した業者に対して特許権を行使しようとした事件です。

 結論から述べると、この事件では、特許権者が特許権を行使することが許されました

 大合議判決では、

 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、特許権の効力は、当該特許製品の使用、譲渡等には及ばず、特許権者は、当該特許製品について特許権を行使することは許されない。

としながらも、

 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ、それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許権者は、その特許製品について、特許権を行使することが許される。

と判示しました。

 また、国外で第三者が同様の再充填を行なった場合にも、日本国内で特許権の行使を行うことができると判示されています。

 すなわち、この事件では「同一性を欠く特許製品が新たに製造された」と認められる場合には、特許権が「国内消尽」されたとも「黙示の授権」がなされたとみなされず、特許権者が特許権を行使することができると判断されました。

 なお、この判例では、

 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合において当該加工等が特許製品の新たな製造に当たるとして特許権者がその特許製品につき特許権を行使することが許されるといえるかどうかについては当該特許製品の属性特許発明の内容加工及び部材の交換の態様のほか取引の実情等も総合考慮して判断すべきである。

と続けて判示されていることも、留意が必要です。 

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4.まとめ

 以上に説明したように、特許権、基本的に、特許発明の実施品がいったん適法に流通に置かれたときは、その実施品を更に第三者に販売する行為は特許権の効力が及ばないとされています。しかしながら、通常想定される使用や修理を超えて「再生産」した場合には、特許権侵害となる場合があります。このように、特許権の消尽の判断はケースバイケースです。そして、国によっても消尽の判断は異なります(米国の判例については、別の記事で紹介します)。そのため、特許権が消尽するか否かは、弁護士や弁理士に十分に相談すべきであると考えます。

 IPOMOEAは、日本を始め各国の法律事務所及び特許事務所とつながりがありますので、各国のプラクティスに精通した弁護士及び弁理士に相談をすることができます。特許権の消尽に関するより詳細がお知りなりたい場合は、ぜひご連絡ください。

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