米国における仮出願とは?|米国仮出願の方法およびその知財戦略

もくじ

1. 米国での仮出願とは?

2. 仮出願を用いた知財戦略とは?

3. 手続き上の注意点

4. 日本における「仮出願」とは?

5. まとめ 

  米国における仮出願は、数多くのメリットがあり、様々な戦略に利用されています。実際、或る3年間での優先権出張を伴う米国出願の約18%が、米国仮出願の優先権を主張した出願であった、という調査報告もあります。

米国特許出願における仮出願の割合 

 一方で、日本では、仮出願の存在を知っていても、利用している出願人が多いとは言えない状況です。しかしながら、米国仮出願は、日本の特許出願人にとっても十分な利用価値のある制度なのです。

 この記事では、米国での仮出願のメリットを知ってもらうため、米国仮出願の概説と、仮出願を利用した知財戦略について紹介します。 

1. 米国での仮出願とは? 

 米国仮出願(U.S. Provisional Application)とは、優先権の基礎となる出願としての地位を有する仮の出願であり、その出願日から1年以内に本出願を行うことを前提に先願の地位を付与する出願です(35 U.S.C. 111(b), 37 CFR 1.53(c))。

 この仮出願は、あくまで「仮」の出願であるため、審査の対象とはなりません。仮出願の内容を審査してもらうためには、仮出願から12ヶ月以内に本出願をする必要があります。

 しかし、仮出願は、以下の書面及び手続きで出願することができます。
・明細書
・出願料
・カバーシート

 言い換えると、仮出願では、クレームを提出する必要がありません

 また、明細書は、英語以外の言語で作成したものを提出することができます。つまり、仮出願では、日本語の明細書を提出することができます。そして、仮出願の段階ではその翻訳の提出は要求されません。ただし、その後で通常の出願をした際に、仮出願の翻訳及びその翻訳が正確であることを述べる陳述書を提出することが必要です。

 そして、米国の仮出願は、米国において正規の国内出願とされている(パリ条約第4条A(2)及び(3))ことから、パリ条約による優先権の主張の基礎とすることができます。つまり、仮出願の優先権を主張して、米国だけでなく、日本にも出願することができます。 

2. 仮出願を用いた知財戦略とは?

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 米国では、2014年〜2018年の5年間で、毎年平均約11,000件の仮出願がなされており、この間の仮出願からの特許権取得の割合は約67%という結果が報告されています。

仮出願件数における特許権取得の割合 

 この事実からも、米国では、仮出願が戦略的に積極的に利用されていますことがわかります。

 さて、仮出願を用いた知財戦略とはどのようなものがあるのでしょうか?ここで、仮出願を用いた知財戦略の例を紹介します。 

01.

簡易な方式で出願可能→緊急避難的な出願

 仮出願では、先に述べたように簡易な手続きで出願でき、本出願のように明細書の記載方式を整える必要がありません。極端には、研究報告書や、論文などを提出することもできます。
 そのため、緊急避難的に出願し、出願日を確保する、といった方策が挙げられます。

 特に、日本では、学会などで発表した場合、特許法第30条、すなわち新規性喪失の例外の適用申請をして出願を行うことで、新規性喪失の例外の適用を受けることができます。しかしながら、このような出願は、日本国内では新規喪失の例外の適用を受けることができますが、この出願を優先権の基礎として外国に出願した場合、学会発表により新規性がないと判断される恐れがあります。(なお、米国では、グレースピリオド(発明の有効出願日前1年以内にされた開示は新規性違反の先行技術とはならない)があるため、必ずしも新規性なしと判断されるとは限りません。)

 このような場合、日本ではなく、米国に仮出願をして出願日を確保し、その米国仮出願の優先権を主張して、日本や他国に出願する、といった戦略を利用することができます。 

02.

安価→権利化を望む可能性がある発明について、とりあえず出願日を確保する

 仮出願は、本出願よりも安価です。そのため、権利化を望む可能性がある発明を、とりあえず仮出願により出願し、出願日を安価に確保する、といった方策が挙げられます。

 仮出願していても、権利化をする必要がなければ、本出願をしないという選択肢を取ることにより、仮出願をしない場合よりも費用を抑えることができます。 

03.

出願日を遅らせる→権利期間を引き延ばす

 米国では、特許の存続期間が20年と定められていますが、米国特許法では、仮出願に基く本出願の存続期間の起算日は本出願の出願日と定められています。
 そのため、最初に米国仮出願をして、後に適切な優先権を主張した本出願を行えば、特許の存続期間は、仮出願の出願日から21年の期間となります。つまり、直接本出願を行った場合と比較すると、1年長く特許権を存続させることができます。 

04.

審査包袋の作成を遅らせる→競合他社の目から逃れる

 仮出願に対しては審査がなされません。そのため、本出願に対する審査が行われるまで、審査包袋の作成を遅らせることができます。
 審査包袋の内容は公開されるため、審査包袋の作成を遅らせることによって、自身の特許出願の内容を競合他社に知られるのを遅らせることができます。
 出願が集中していたり、競争が激しい分野では、この戦略は大きなメリットがあります。 

05.

発明を公知とするか否かの判断を1年引き延ばす

 USPTOは,もし仮特許出願が後続の本特許出願の優先権主張文書としてクレームされた場合には、仮特許出願を公開します。しかしながら、もし後続の本特許出 願が1年間のうち行われずに、仮特許出願の期間が失効した場合仮特許出願は公開されることはありません。つまり、出願人は,仮出願の出願日から1年間、仮特許出願した発明を公知とするか否かを判断する猶予が与えられることになります。
 秘匿すべき発明だと分かった場合、公知としない判断をすることもできます。
 

米国特許仮出願

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3.   手続き上の注意

    以上説明したように、米国仮出願には、多くのメリットがあり、戦略的に利用されています。

 特に、仮出願は簡易的に出願日を確保できる制度なのですが、安易に利用しようとして、のちの本出願の優先権の基礎としての役割を果たすことができない内容で仮出願をすると、仮出願のメリットを享受できずに放棄せざるを得ないという羽目に陥る恐れがあります。実際、そのようなケースが少なくありません。

 このような事態を防ぐには、仮出願の内容に熟知した専門家のコンサルを受けることが有効です。 

4. 日本における「仮出願」とは?

  最後に、日本における「仮出願」について紹介します。

 日本には、「仮出願」の制度は、明文上はありません。しかしながら、日本の特許法には、第38条の2の規定があります。

 特許法第38条の2は、以下の通りです。

1 特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。
一 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 明細書(外国語書面出願にあっては、明細書に記載すべきものとされる事項を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第1項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。
2 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、その補完をすることができる。
4 前項の規定により補完をするには、経済産業省令で定めるところにより、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。ただし、同項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に明細書を提出しなければならない。
5 第3項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に第36条第2項の必要な図面(外国語書面出願にあっては、必要な図面でこれに含まれる説明を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの。以下この条において同じ。)を提出することができる。
6 第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしたときは、その特許出願は、手続補完書を提出した時にしたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、手続補完書を提出した日を特許出願の日として認定するものとする。


 つまり、日本でも、第36条の2第1項の要件を満たすように、(1)特許を受けようとする旨の表示が明確とし、(2)特許出願人の氏名又は名称を明確に記載し、(3)明細書を添付して、緊急避難的に特許出願すれば、出願日を確保できます。

 ここでの明細書は、論文のような形でも構いません。

 しかしながら、方式を整えるための補正が必要となる場合や、漏れのない強い権利を獲得するための補正を行う必要が生じる場合があります。この補正の際、先に提出した明細書(当初明細書)に記載した内容が不十分であればあるほど、補正される内容が当初明細書に記載された事項から自明と言えず、新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)と判断されるおそれが大きくなります。サポート要件及び実施可能要件違反を防ぐための補正も適切にできなくなる可能性もあります。

 そのため、日本版仮出願も安易に利用するのは危険といえます。 

5. まとめ

 このように、米国仮出願は次のような戦略に利用できます。
         
         緊急避難的な出願の手段
         安価に出願日を確保することができる
         出願日を遅らせる、競合他社の目から逃れる
         発明を公知とするか否かの判断を引き延ばす

    ただし、安易に利用すると、優先権を主張して本出願や外国出願(日本を含む)をすることができなくなる恐れがあります。

 特許法第38条の2の規定を利用して、日本でも仮出願のような出願を行うことができますが、こちらも安易に利用すると、記載要件を満足させるための補正が新規事項の追加と判断される恐れがあります。

 そのため、仮出願を行う場合には、仮出願に精通した専門家に相談することをお勧めします。

 IPOMOEAは、米国仮出願制度にも精通しております。米国特許出願にかかる翻訳・調査業務だけでなく仮出願を用いた戦略の策定もサポートさせていただきます。ぜひ一度お問い合わせください。

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