『少年は残酷な弓を射る』のレビューとセリフ



少年は残酷な弓を射る

解説
「ボクと空と麦畑」「モーヴァン」のリン・ラムジー監督が、強い悪意と執着心を抱く息子とその母親の関係を緊張感たっぷりに描いた人間ドラマ。自由奔放に生きてきた作家のエバは子どもを授かったことでキャリアを捨て、母親として生きる道を選ぶ。生まれた息子はケビンと名づけられるが、幼い頃からエバに懐くことはなく、反抗を繰り返していく。やがて美しい少年へと成長したケビンは反抗心をますます強めていき、それがある事件の引き金となる。「フィクサー」のティルダ・スウィントンが主演。

2011年製作/112分/PG12/イギリス
原題:We Need to Talk About Kevin
配給:クロックワークス

出典
https://eiga.com/movie/57494/


『少年は残酷な弓を射る』ひとことレビュー


マタニティブルー(育児ノイローゼ)だった母親の、
自分に対する嫌悪感を察してしまった息子が、
母親に愛されていないのではないかという不安を払拭するために、
あの手この手(殺人含む)で母親の愛情を試す、


という物語です。


『少年は残酷な弓を射る』感想つれづれ



★赤色使いが美しくて恐ろしい

劇中には要所ごとに赤色が登場します。
また、赤色は嫌な予感を与える役割を果たしています。

印象的だったのは、
「トマト投げ祭り」、
「手についた赤色のペンキ」
「パンの上のいちごジャム」のシーンなど。

登場人物、
特に母親にとって嫌なことが起こる前、
または起こっている最中に、
とにかく赤色のものが登場して、
観客も不穏な気持ちにさせてくれます。


★ティルダ・スウィントンの演技がすばらしい

キャリア史上最高の演技とも言われています。

本来、強い女性だと思うのですが、
恐ろしい息子(エズラ・ミラー)を前にして、
たじろぐ姿が印象的でした。

あとはやっぱりラストで息子を抱きしめるシーン。
母の愛そのものでした。


★食べ物の扱い方が効果的

食べ物も不穏さの象徴として表現されています。

食べることは本能だけに、
それが嫌な場面で使用されると、
直接胃にうったえかけらるような気分になって嫌さも倍増します。


『少年は残酷な弓を射る』大事なテーマ(親子関係)


ひとことレビューに記載のとおりですが、

母親からの愛に餓えた息子による、
母親から注目されたいとか、
母親からの愛情を試したいとか、
母親を独占したいとか、などの気持ち。

これらがとてつもなく大きいのです。

そして、
母親に対して素直に愛情表現できなくて、
困らせることばっかりをしてしまう。

最終的には父と妹を殺したうえに、
自分の通っている学校で無差別殺人を行います。

殺人してまでも息子が求めていたことは、
母に自分の存在を認めてもらうこと。


殺人してまでも息子が問いたかったことは、
自分を愛しているのかどうかということ。



このように歪んだ愛情が大きすぎることで、
多分、息子本人も心の底では当惑していたのだと思います。

それがラストシーンの少年院での母との会話で、

Eva(母) : Why?
=どうして?(殺人の理由を聞いていると思います)

Kevin (息子): I used to think I knew. Now I'm not so sure.
=分かってると思ってたけど、そうじゃなかった

という、自分のこともよく分からないといったような、
セリフにつながるのだと思います。


「どうして私にひどいことばかりするの?」と、
母親が息子に対してよく言っている(思っている)のですが、

その理由は「母に愛されたいから」にほかならない。
母親がもしそのことに、もっと早く気づいていれば、
息子は無差別殺人を起こさなかったかもしれない。

あの殺人事件は、
両親が離婚することになり、
息子は父親が引き取ることになり、
母親と離れ離れになることに対する最後の抵抗だったので。



『少年は残酷な弓を射る』ラストシーン


息子が成人して少年院から刑務所に送られる前、
その不安を表している息子のことを、
母親が強く抱きしめます。

このときにようやく息子は、
母からの愛情を確認できたのではないでしょうか。


自分たち以外の家族全員を殺して、
知らない他人まで巻き込んで、
服役までして、

それでも母は自分を受け入れてくれた。

と。


ものすごく個人的に感じたことなのですが、
母親役のティルダ・スウィントンは長身な人で、
息子を抱きしめたときでも息子よりも身長が高いのです。

それがなぜか説得力があるというか。
母の身長は、男の子供には抜かされてしまうものなのですが、
この親子はそうではなくて。

母の愛にかなうものはないなと絵的に感じしまう場面でした。


母は家に帰っても、
誰もいない息子の部屋をきれいに片づけています。
いつ息子が帰ってきてもいいように。

その後もふたりの人生や易しくはないはずですが(人殺しなので当然)、
息子を見捨てることなく(だってこの息子を育てたのは母なのだから)、
ともに生きていこうという決意が見えます。

余談ですが、なぜかこのときの息子の部屋が、
ポップな水色でかわいらしいへやっだったのが、
話の流れと矛盾していて、
意外にも妙に穏やかな将来を予想してしまって、
却って印象的でした。



私も過去にある助産婦さんから、
「赤ちゃんはお腹にいるときからお母さんの話を聞いている」
という話を聞かされたことがあります。

『少年は残酷な弓を射る』はその極端なかたちですね。



『少年は残酷な弓を射る』での「context」の使い方


英語に「context」という単語があります。

もともと訳しづらいというか、
どの訳語を当てればいいのか、
いつも立ち止まって考えてしまう単語です。

日本語訳としては、
文脈、前後関係、状況、背景、環境、コンテクスト、コンテキスト

などがあります。

この「context」を使用した興味深いセリフが劇中に登場するので、
ご紹介いたします。


場面:
両親が離婚について話し合っているところを、
息子がこっそり聞いてしまいます。
それを父親が見つけたときの会話です。

Franklin (父): Hey, Kev. Listen buddy, it's easy to misunderstand something when you hear it out of context.
=きっと誤解しているよ。話を全部聞いてたわけじゃない。

Kevin(息子) : Why would I not understand the context? I am the context.
=そんなことないでしょ。僕の話だよね。


使い方的に分るでしょうか。

「I am the context.」という部分のせいで、
なぜかこのやり取りを強く記憶してしましました。

ネイティブの人にも理解しづらかったのか、
米国版 yahoo 知恵袋みたいなサイトで、
「この context はどういう意味?」という質問がされていました。



『少年は残酷な弓を射る』は大好きな映画です。
「歪んだ愛」系が好きなのでなおさら。

ティルダスウィントンも大好きな女優さんです。

また特記すべきは、
エズラ・ミラーの美少年っぷり。
ほんとに美しいだけに、
こんな息子ににらまれると怖さもひとしおです。

ジョニー・グリーンウッドの音楽もすばらしい。


好き嫌いが分かれる作品のは承知のうえですが、
私は好きです。名作だと思う。
原作の小説も大ヒットしてるみたいなので、
ぜひ読んでみたいです(原文で!)。


※セリフの引用は以下から。
https://www.imdb.com/title/tt1242460/characters/nm3009232






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comments (0) | trackbacks (0) | posted by Yukina Miyazaki

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